南北朝時代から戦国時代にかけて、日本全国に多くの城が築かれました。日本の城郭といえば、石垣に囲まれて、天守が建っているというイメージがありますが、中世に築かれた城は、そのほとんどが山城でした。
山城とは、自然の山を削って、堀や土塁を廻らした中世の城郭です。織田信長の時代以前の山城は、石垣もなく、全体が土づくりであり、曲輪(くるわ)には天守のような複雑な建造物は設けられていませんでした。
山城はいわば「土づくりの要塞」です。自然の山を大幅に切り崩して、急な斜面である切岸(きりぎし)を設けることで敵の侵入を阻みました。また、要所に土塁(どるい)を積んだり、堀切(ほりきり)で尾根を分断するなど、山城には特有の構造がみられます。現在に残るこれらの遺構は、山城の建造者の工夫の跡であり、山城にとっての見どころや魅力でもあります。